腹膜原発漿液性乳頭状腺癌の1例

症例は72歳,女性.右下腹部痛と腹部膨満感を主訴に来院した.腹部CT, MRIで少量の腹水と臍下部腹壁直下にomental cake状の腫瘤を認め,同部の細胞診で腺癌と診断された.全身の検索を行ったが原発巣は不明であり,試験開腹術を施行した.開腹所見では,漿液性の腹水を認め,大網は硬い腫瘤を形成していた.腸間膜には多数小結節を認め,癌性腹膜炎の所見であったが,原発臓器は指摘しえなかった.大網腫瘤の病理検査で漿液性乳頭状腺癌と診断した.通常は卵巣原発が大半を占めるが,同時に摘出した卵巣には病変を認めず,腹膜原発と診断した.卵巣癌に準じ, carboplatinとpaclitaxel併用による全身...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 64; no. 11; pp. 2905 - 2908
Main Authors 東, 良平, 植田, 宏治, 野村, 修一, 小橋, 雄一, 臼井, 由行, 河合, 俊典
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本臨床外科学会 25.11.2003
Subjects
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.64.2905

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Summary:症例は72歳,女性.右下腹部痛と腹部膨満感を主訴に来院した.腹部CT, MRIで少量の腹水と臍下部腹壁直下にomental cake状の腫瘤を認め,同部の細胞診で腺癌と診断された.全身の検索を行ったが原発巣は不明であり,試験開腹術を施行した.開腹所見では,漿液性の腹水を認め,大網は硬い腫瘤を形成していた.腸間膜には多数小結節を認め,癌性腹膜炎の所見であったが,原発臓器は指摘しえなかった.大網腫瘤の病理検査で漿液性乳頭状腺癌と診断した.通常は卵巣原発が大半を占めるが,同時に摘出した卵巣には病変を認めず,腹膜原発と診断した.卵巣癌に準じ, carboplatinとpaclitaxel併用による全身化学療法を施行したところ, CT上,腹水および大網腫瘤は消失した.原発巣の確定が困難な癌性腹膜炎症例では,本例のような症例も念頭に置き,治療にあたるべきであると考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.64.2905