歯ブラシによる脳賦活作用 fMRIを用いて

〈目的〉21世紀は病気にならないための予防医学の時代と言われているが、歯や舌などに蓄積している細菌が原因で誤嚥性肺炎になる高齢者が増加していることから、口腔ケアが問題視されている。歯ブラシによるブラッシングは減弱した嚥下反射を回復させることが明らかになり、全身健康におけるブラッシングの有用性が期待されている。口腔内には種々のレセプターが存在することから、ブラッシングの刺激により脳が活性化すると考えられる。そこで今回、非侵襲的磁気共鳴機能画像(fMRI)を用いて、歯ブラシのブラッシング刺激による脳活動変化を調べ、高次脳機能におけるブラッシングの機能的意義を検討した。<BR>〈方法〉被験者は、十分...

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Published in日本農村医学会学術総会抄録集 p. 243
Main Authors 平松, 達, 仲田, 文昭, 小野塚, 実, 川崎, 浩伸, 土屋, 十次, 丹羽, 政美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2008
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.57.0.243.0

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Abstract 〈目的〉21世紀は病気にならないための予防医学の時代と言われているが、歯や舌などに蓄積している細菌が原因で誤嚥性肺炎になる高齢者が増加していることから、口腔ケアが問題視されている。歯ブラシによるブラッシングは減弱した嚥下反射を回復させることが明らかになり、全身健康におけるブラッシングの有用性が期待されている。口腔内には種々のレセプターが存在することから、ブラッシングの刺激により脳が活性化すると考えられる。そこで今回、非侵襲的磁気共鳴機能画像(fMRI)を用いて、歯ブラシのブラッシング刺激による脳活動変化を調べ、高次脳機能におけるブラッシングの機能的意義を検討した。<BR>〈方法〉被験者は、十分にインフォームドコンセントの得られた成人12名(25~60歳)を対象とした。歯ブラシは、一般的なクリニカ歯ブラシ(ノーマル:ライオン_(株)_)、歯科用DENT EX歯ブラシ(硬さの違う3種類:ライオン歯科材_(株)_)を用い、上顎または下顎前歯部の歯と歯肉をブラッシングした。各歯ブラシに対し32秒で4サイクルのブラッシングを行ったときの脳BOLD(blood oxidation level-dependent)シグナルをSPM5を用いて解析し、賦活部位の同定および賦活強度を検索した。使用装置はSigna MR/i Echo Speed 1.5T(GE社製)を用いた。BOLD法の撮像条件はGRE-EPI法を使用し、TR 4000msec、TE 44msec、Flip angle 90<SUP>°</SUP>、Bandwidth 100、Matrix 64×64、NEX1、FOV 240mm、Slice thickness 3.8mm、 spacing 0.2mm、42スライスで全脳をカバーできるように撮像した。<BR>〈結果および考察〉歯ブラシによる歯・歯肉のブラッシング刺激によって大脳の感覚運動野(SMC)、補足運動野(SMA)、前頭前野(PFA)が賦活された。これらの部位の賦活は、全歯ブラシに共通して認められた。歯ブラシの違いによる各脳賦活部位のBOLDシグナルは、歯ブラシの種類によって賦活度に相違が認められたものの、いずれも有意に(p<0.05)増加した。また、歯科用歯ブラシにおいては、ソフト、ノーマル、ハードとも前帯状回(ACC)の賦活が誘発された。さらに、情動発動の座である扁桃体(AMY)の賦活も認められた。この賦活は、聞き取り調査と併せて解析したところ、被験者の歯ブラシの硬さに対する好みによることがわかった。<BR>〈結論〉歯ブラシによるブラッシングは、口腔のケアだけでなく、脳の認知機能や情動に関連するネットワークとリンクすることが期待された。特に、前頭前野の賦活は、高齢者の知・情・意の活動増強に対してブラッシングが有用であることを示唆している。
AbstractList 〈目的〉21世紀は病気にならないための予防医学の時代と言われているが、歯や舌などに蓄積している細菌が原因で誤嚥性肺炎になる高齢者が増加していることから、口腔ケアが問題視されている。歯ブラシによるブラッシングは減弱した嚥下反射を回復させることが明らかになり、全身健康におけるブラッシングの有用性が期待されている。口腔内には種々のレセプターが存在することから、ブラッシングの刺激により脳が活性化すると考えられる。そこで今回、非侵襲的磁気共鳴機能画像(fMRI)を用いて、歯ブラシのブラッシング刺激による脳活動変化を調べ、高次脳機能におけるブラッシングの機能的意義を検討した。<BR>〈方法〉被験者は、十分にインフォームドコンセントの得られた成人12名(25~60歳)を対象とした。歯ブラシは、一般的なクリニカ歯ブラシ(ノーマル:ライオン_(株)_)、歯科用DENT EX歯ブラシ(硬さの違う3種類:ライオン歯科材_(株)_)を用い、上顎または下顎前歯部の歯と歯肉をブラッシングした。各歯ブラシに対し32秒で4サイクルのブラッシングを行ったときの脳BOLD(blood oxidation level-dependent)シグナルをSPM5を用いて解析し、賦活部位の同定および賦活強度を検索した。使用装置はSigna MR/i Echo Speed 1.5T(GE社製)を用いた。BOLD法の撮像条件はGRE-EPI法を使用し、TR 4000msec、TE 44msec、Flip angle 90<SUP>°</SUP>、Bandwidth 100、Matrix 64×64、NEX1、FOV 240mm、Slice thickness 3.8mm、 spacing 0.2mm、42スライスで全脳をカバーできるように撮像した。<BR>〈結果および考察〉歯ブラシによる歯・歯肉のブラッシング刺激によって大脳の感覚運動野(SMC)、補足運動野(SMA)、前頭前野(PFA)が賦活された。これらの部位の賦活は、全歯ブラシに共通して認められた。歯ブラシの違いによる各脳賦活部位のBOLDシグナルは、歯ブラシの種類によって賦活度に相違が認められたものの、いずれも有意に(p<0.05)増加した。また、歯科用歯ブラシにおいては、ソフト、ノーマル、ハードとも前帯状回(ACC)の賦活が誘発された。さらに、情動発動の座である扁桃体(AMY)の賦活も認められた。この賦活は、聞き取り調査と併せて解析したところ、被験者の歯ブラシの硬さに対する好みによることがわかった。<BR>〈結論〉歯ブラシによるブラッシングは、口腔のケアだけでなく、脳の認知機能や情動に関連するネットワークとリンクすることが期待された。特に、前頭前野の賦活は、高齢者の知・情・意の活動増強に対してブラッシングが有用であることを示唆している。
Author 仲田, 文昭
丹羽, 政美
小野塚, 実
川崎, 浩伸
土屋, 十次
平松, 達
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