嚥下時の咽頭食道接合部の内圧低下にどの神経が関与するか

【目的】嚥下時に咽頭食道接合部では内圧の一時的な低下とその後に続く上昇が認められる. これにより食塊の咽頭から食道への円滑な移送が可能になる. この内圧の低下は咽頭収縮筋の持続的活動の抑制と, 舌骨及び喉頭の挙上によって起こると考えられている. 一方, 喉頭の手術による反回神経切断後に誤嚥が認められる例があり, 反回神経も咽頭食道接合部の内圧低下に関与していると思われる. 本研究では嚥下時の内圧低下にどの神経が関与しているか調べた. 【方法】ウレタン麻酔下のウサギを用い, 内圧記録用チューブを食道内に挿入し, 側孔を咽頭食道接合部の腹側面に位置させた. 反回神経, 舌下神経及び迷走神経咽頭枝の...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 43; no. 5; p. 598
Main Authors 福島伸一, 真貝富夫, 北川純一, 高橋義弘, 田口洋, 山田好秋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 20.08.2001
Japanese Association for Oral Biology
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ISSN0385-0137

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Summary:【目的】嚥下時に咽頭食道接合部では内圧の一時的な低下とその後に続く上昇が認められる. これにより食塊の咽頭から食道への円滑な移送が可能になる. この内圧の低下は咽頭収縮筋の持続的活動の抑制と, 舌骨及び喉頭の挙上によって起こると考えられている. 一方, 喉頭の手術による反回神経切断後に誤嚥が認められる例があり, 反回神経も咽頭食道接合部の内圧低下に関与していると思われる. 本研究では嚥下時の内圧低下にどの神経が関与しているか調べた. 【方法】ウレタン麻酔下のウサギを用い, 内圧記録用チューブを食道内に挿入し, 側孔を咽頭食道接合部の腹側面に位置させた. 反回神経, 舌下神経及び迷走神経咽頭枝の切断前後で, 上喉頭神経により誘発された嚥下時の内圧変化を比較した. さらに切断した各神経の末梢端に連続電気刺激を与え内圧への影響を調べた. 【結果】反回神経の切断により嚥下時の内圧低下は神経切断前よりも減少し, 末梢端電気刺激で内圧は低下した. また舌下神経の切断によっても内圧低下が減少した. 一方, 迷走神経咽頭枝切断により嚥下時の内圧上昇は消失し, 末梢端電気刺激で内圧は上昇した. 【結論】反回神経と舌下神経が嚥下時の内圧低下に関与している. 反回神経は声門閉鎖時の披裂軟骨の内転により, また舌下神経は舌骨の挙上により内圧を低下させ, 食塊の食道への円滑な移送を助けていると考えられる.
ISSN:0385-0137