矯正力による歯の移動時の歯周組織におけるHSP47の発現と局在に関する免疫組織化学的研究

【目的】HSP47はストレスタンパク質の一種で, 種々の細胞において熱ストレスで発現を増強するだけでなく, 生理的状態においてもプロコラーゲンのフォールディングに密接に関わっていることが報告されているが, 歯周組織での発現, 特にメカニカルストレス負荷に伴う発現と局在の変化については不明な点が多い. そこで本研究は矯正力による歯の移動時の歯周組織におけるHSP47の発現と局在を調べることにより, メカニカルストレスによる歯周組織の細胞レベルでの改造機構を明確にすることを目的とする. 〈BR〉【方法】6週齢の雄性ラットの上顎第一臼歯に10gの矯正力を1~14日間負荷した. 実験終了後4%PFAで...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 42; no. 5; p. 448
Main Authors 鈴木裕樹, 清水義之, 三谷英夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 30.08.2000
Japanese Association for Oral Biology
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ISSN0385-0137

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Summary:【目的】HSP47はストレスタンパク質の一種で, 種々の細胞において熱ストレスで発現を増強するだけでなく, 生理的状態においてもプロコラーゲンのフォールディングに密接に関わっていることが報告されているが, 歯周組織での発現, 特にメカニカルストレス負荷に伴う発現と局在の変化については不明な点が多い. そこで本研究は矯正力による歯の移動時の歯周組織におけるHSP47の発現と局在を調べることにより, メカニカルストレスによる歯周組織の細胞レベルでの改造機構を明確にすることを目的とする. 〈BR〉【方法】6週齢の雄性ラットの上顎第一臼歯に10gの矯正力を1~14日間負荷した. 実験終了後4%PFAで固定を行い, 通法に従って連続切片を製作し, 抗HSP47モノクローナル抗体を用いて免疫染色を行い, 顕微鏡下で観察した. 〈BR〉【結果】ラット第一臼歯は生理的に遠心移動を行っており, 対照群では近心側歯根膜の歯槽骨縁上の骨芽細胞, 骨細胞, セメント芽細胞にHSP47の発現が認められた. これに対して実験群ではHSP47の発現部位が変化し, 牽引側の歯槽骨縁上の骨芽細胞に強い発現が認められ, 牽引側の歯根膜線維芽細胞, セメント芽細胞, 歯槽骨縁直下の骨細胞にも発現が観察された. 〈BR〉【考察および結論】以上の結果より, HSP47の発現は矯正力による歯の移動に伴う牽引側歯周組織の改造機構に密接に関連していることが示唆された.
ISSN:0385-0137