オステオカルシンによる象牙芽細胞分化の抑制

【目的】最近のオステオカルシン, ノックアウトマウスの研究から, このタンパク質が骨芽細胞の機能を抑制しているのではないかと考えられるようになった. そこで, 骨芽細胞と似た性質を持つ象牙芽細胞の分化に対するこのタンパク質の効果について, 歯髄細胞分化系を用いて検討した. 【方法】ラット切歯より歯髄細胞を分離して, アスコルビン酸, 2-グリセロ, リン酸を含むα-MEM培地で培養した. コンフルエント後, ウシ骨より精製したオステオカルシンを添加した. 培養後, 細胞を回収して, アルカリフォスファターゼ活性を測定し, また, 象牙質シアロ, タンパク質(DSP), BSP等の発現をRT-P...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 43; no. 5; p. 566
Main Authors 藤沢隆一, 水野守道, 久保木芸徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 20.08.2001
Japanese Association for Oral Biology
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ISSN0385-0137

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Summary:【目的】最近のオステオカルシン, ノックアウトマウスの研究から, このタンパク質が骨芽細胞の機能を抑制しているのではないかと考えられるようになった. そこで, 骨芽細胞と似た性質を持つ象牙芽細胞の分化に対するこのタンパク質の効果について, 歯髄細胞分化系を用いて検討した. 【方法】ラット切歯より歯髄細胞を分離して, アスコルビン酸, 2-グリセロ, リン酸を含むα-MEM培地で培養した. コンフルエント後, ウシ骨より精製したオステオカルシンを添加した. 培養後, 細胞を回収して, アルカリフォスファターゼ活性を測定し, また, 象牙質シアロ, タンパク質(DSP), BSP等の発現をRT-PCRによって検出した. 【結果】歯髄細胞は細胞結節を形成し, 石灰化する能力を持ち, DSPを発現したので, 象牙芽細胞様細胞に分化したと考えられる. オステオカルシンを添加すると, 添加後3日目にアルカリフォスファターゼ活性は低下した. 添加量を変化させると, 4-20μg/mlで, アルカリフォスファターゼ活性, DSP, BSPの発現の低下が見られた. これらの象牙芽細胞分化マーカーの低下は, 象牙芽細胞への分化が阻害されたことを示している. 【結論】オステオカルシンは, 歯髄細胞の象牙芽細胞様細胞への分化を抑制した. これは, すでに分化した象牙芽細胞による, 未分化細胞の分化へのフィードバック阻害の1つの機構であると想定される.
ISSN:0385-0137