モロッコ王国におけるこれまでの調査結果よりハンセン病の近年の動向と独自の治療Regimenについての検討

1996年より開始された, 「モロッコ王国におけるハンセン病対策(国際医療協力研究委託事業)」に関する調査が3年間で区切られ, 今年度より新たに指定課題として引きつがれることになった. これまでの調査結果より, 当国での疫学的現状と, 新患者数の動向について考える. また過去3年間に把握できた症例について, 主としてらい反応の視点より臨床経過を報告する. これまでの概要:(1)1992年以降, 独自の多剤併用療法(PCT)が国の治療方針となった. これまでのところ, PCT完了者からの再発は認められていない. (2)1980年には, 国全体での有病率が0.75-1.5/1000と推定されたが,...

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Published in日本ハンセン病学会雑誌 Vol. 69; no. 1; p. 50
Main Authors 並里まさ子, 小川秀興
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハンセン病学会 01.03.2000
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ISSN1342-3681

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Summary:1996年より開始された, 「モロッコ王国におけるハンセン病対策(国際医療協力研究委託事業)」に関する調査が3年間で区切られ, 今年度より新たに指定課題として引きつがれることになった. これまでの調査結果より, 当国での疫学的現状と, 新患者数の動向について考える. また過去3年間に把握できた症例について, 主としてらい反応の視点より臨床経過を報告する. これまでの概要:(1)1992年以降, 独自の多剤併用療法(PCT)が国の治療方針となった. これまでのところ, PCT完了者からの再発は認められていない. (2)1980年には, 国全体での有病率が0.75-1.5/1000と推定されたが, PCTの採用以降, 新患者数は約10年前よりWHOの目標(1/100,000人以下)を達成している. 結果 1 グラフに示すごとく, 過去3年間新患者中に占める61歳以上の割合が増加している. しかし20-50歳の青壮年が大半を占め, 50歳以下が約70%を占める. 2 病型は3年間で著変なく, LL, BLが約60%を占めるが, 性差が著明で, 男性で70%以上, 女性では半数に満たない. また男性では, LL, BLが他の病型よりも高齢の傾向が見られるが, 女性では, 逆の傾向がある. 3 治療前の菌検査は, 男性では陰性例の方が低年齢であるが, 女性では逆の現象が見られた. 4 Prednisolone(PSL)は, PCT開始後の25%に使用されていた. 同剤の使用と病型, 菌指数などとの関連をさらに検討する. らい反応の治療はすべて中央の国立病院(CNL)で行われており, 治療経過中の障害悪化例は認められていない. 考察PCT採用後新患者数は低下したが, 近年もなお100人弱の新患者が持続していること, 全体としての明らかな高齢化は見られないことより, 今後も積極的な対策活動を要する. 病型に著明な性差が見られ, この地域での特徴の一つと考えられる. PSLの使用例数からみたらい反応の発症率は, WHO/MDTでのそれと大差が無いようであるが, らい反応はすべてCNLで管理されるため, 適切な治療が期待できる. 当国での治療方針は, これまでのところ有効な結果を得ている. 本研究は, Dr. Faouzia Smahi(Centre National de Leprologie, Ain shok Casablanca)の協力を得て行われている.
ISSN:1342-3681