脊椎手術をせずに結核性腸腰筋膿瘍のドレナージで神経障害が改善した脊椎結核の1例

「要旨」: 症例は75歳女性. 健診で両側肺野に異常陰影を認め当院に紹介となり, 肺結核の診断で入院となった. 身体診察で左鼠径部に腫瘤を触知した. 造影CTでは腰椎から腸腰筋, 左鼠径部に至る広範な結核性病変を認めた. INH, RFP, EB, PZAでの治療を開始した. 下肢の神経障害と排尿障害があり, 当初は脊椎病変によるものと考え, 脊椎手術を検討した. しかし病歴聴取により, これらの症状は脊椎結核に伴う神経症状ではなく腸腰筋膿瘍によるものであることが疑われ, 膿瘍のドレナージによって症状が後遺症なく消失し, 神経障害は腸腰筋膿瘍による圧迫によって生じたことが示唆された. 脊椎病変...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in結核 Vol. 90; no. 9; pp. 635 - 639
Main Authors 佐藤祐, 村田研吾, 佐々木茜, 和田曉彦, 高森幹雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核病学会 15.09.2015
Online AccessGet full text
ISSN0022-9776

Cover

More Information
Summary:「要旨」: 症例は75歳女性. 健診で両側肺野に異常陰影を認め当院に紹介となり, 肺結核の診断で入院となった. 身体診察で左鼠径部に腫瘤を触知した. 造影CTでは腰椎から腸腰筋, 左鼠径部に至る広範な結核性病変を認めた. INH, RFP, EB, PZAでの治療を開始した. 下肢の神経障害と排尿障害があり, 当初は脊椎病変によるものと考え, 脊椎手術を検討した. しかし病歴聴取により, これらの症状は脊椎結核に伴う神経症状ではなく腸腰筋膿瘍によるものであることが疑われ, 膿瘍のドレナージによって症状が後遺症なく消失し, 神経障害は腸腰筋膿瘍による圧迫によって生じたことが示唆された. 脊椎病変だけではなく腸腰筋膿瘍も神経障害を起こしうることと, 詳細な問診が診断と治療方針の決定に有用であることを表す教訓的な1例と考えられる.
ISSN:0022-9776