微小なダニ類幼虫の形態観察における低真空走査型電子顕微鏡の有用性

「緒言」 ダニ類媒介性疾患の疫学的調査を行う場合, 最初に直面する作業は採集したダニ類の種の同定である. そして, その後のダニからの病原体分離実験や当該疾病の媒介サイクルを推定するためにも, ダニ類の種同定を的確に行う必要がある. マダニ成虫の同定に関しては文献や成書も充実しており(Yamaguti et al., 1971; 高田, 1990), 体のサイズも比較的大きいので, 実体顕微鏡下で容易に検索できる, 一方, マダニ幼虫およびツツガムシ幼虫の同定に関しては実用的な文献が少ないこともあり(北岡, 1985; 高田, 1990; 藤田・高田, 2007), マダニ幼虫およびツツガムシ...

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Published inMedical Entomology and Zoology Vol. 64; no. 1; pp. 55 - 58
Main Author 矢野泰弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本衛生動物学会 15.03.2013
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ISSN0424-7086

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Summary:「緒言」 ダニ類媒介性疾患の疫学的調査を行う場合, 最初に直面する作業は採集したダニ類の種の同定である. そして, その後のダニからの病原体分離実験や当該疾病の媒介サイクルを推定するためにも, ダニ類の種同定を的確に行う必要がある. マダニ成虫の同定に関しては文献や成書も充実しており(Yamaguti et al., 1971; 高田, 1990), 体のサイズも比較的大きいので, 実体顕微鏡下で容易に検索できる, 一方, マダニ幼虫およびツツガムシ幼虫の同定に関しては実用的な文献が少ないこともあり(北岡, 1985; 高田, 1990; 藤田・高田, 2007), マダニ幼虫およびツツガムシ幼虫の大きさから光学顕微鏡下で観察しなければならないという煩雑さにも影響され, 検索がしばしば敬遠される傾向にある. ところで, 実体顕微鏡と光学顕微鏡の特性というか役割を考えるなら, 双眼実体顕微鏡は倍率をあまり上げられないし解像度も低いため, 主に成虫の同定に用いられるのに対して, 通常の光学顕微鏡では体表面の構造観察は難しく, もっぱら幼若虫の観察に用いられるものの, 細かい部分はピントをずらしながら観察しなければならない.
ISSN:0424-7086