当院におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) に対するlinezolidのMIC値の推移と薬剤感受性測定法・測定機器の違いによるMIC値の比較検討

「要旨」メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症の治療においてlinezolid(LZD)は重要な抗MRSA薬の1つである. 当院ではWalkAway 96 Plus(ベックマン・コールター)によるプロンプト法を用いた薬剤感受性測定を実施しているが, MRSAでLZDのMIC値がブレイクポイントの感性の上限である4μg/mLを示す株が散見されるようになった. そこで, LZDのMIC値が4μg/mLを示したMRSAを対象として分離率の年次推移を調査したところ, 2010年の1.4%(8/568株)から2014年には24.4%(75/307株), 以降10~15%程度で推移していた. また...

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Published in医学検査 Vol. 70; no. 1; pp. 59 - 65
Main Authors 佐々木潤平, 石垣しのぶ, 松村充, 浅原美和, 厚川喜子, 米谷正太, 斧康雄, 古川泰司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床衛生検査技師会 25.01.2021
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ISSN0915-8669

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Summary:「要旨」メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症の治療においてlinezolid(LZD)は重要な抗MRSA薬の1つである. 当院ではWalkAway 96 Plus(ベックマン・コールター)によるプロンプト法を用いた薬剤感受性測定を実施しているが, MRSAでLZDのMIC値がブレイクポイントの感性の上限である4μg/mLを示す株が散見されるようになった. そこで, LZDのMIC値が4μg/mLを示したMRSAを対象として分離率の年次推移を調査したところ, 2010年の1.4%(8/568株)から2014年には24.4%(75/307株), 以降10~15%程度で推移していた. また, 他法との比較のため, 対象株のうち103株を基準濁度法および寒天平板希釈法で再測定した結果, 全ての株が≦2μg/mLであった. そのうち40株を, DPS192iX(栄研化学), BDフェニックスM50(日本BD), VITEK2(ビオメリュー・ジャパン)で再測定した結果, DPS192iX, BDフェニックスM50は40株全て, VITEK2は39株が≦2μg/mLであった. これらの結果から, プロンプト法による薬剤感受性測定では, MRSAに対するLZDのMIC値が他法・他機器より1管程度高値となることが明らかとなった. ±1管差は許容範囲内とされるが, 他の要因が加わることで2管差以上となり得るリスクがあり, 臨床に与える影響も考慮する必要がある. また, 自施設の薬剤感受性測定法・測定機器の特徴を把握するために検証を行うことは重要である.
ISSN:0915-8669