“社会階層と社会的ネットワーク” 再考 交際のネットワーク〉と〈ケアのネットワーク〉の比較から

社会階層と社会的ネットワークとの関係については, 多くの研究が共通して, “階層が高い方がネットワークの構成は多様である” という知見を共通に報告している. 本稿ではまず先行研究の検討によって, この知見は社交・相談・軽い実際的援助などをネットワークとして測定した結果得られたものであることを示し, これを〈交際のネットワーク〉と呼ぶ. 次にこの交際のネットワークと, 自分の身体的ケアについてのネットワーク (〈ケアのネットワーク〉と呼ぶ) の両方を含んだ調査データを分析する. そしてその結果を基に, 交際のネットワークについては先行研究と同様, 男女ともに階層が高い方がその構成は多様であるが,...

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Published in社会学評論 Vol. 51; no. 2; pp. 235 - 250
Main Author 大和, 礼子
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本社会学会 30.09.2000
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ISSN0021-5414
1884-2755
DOI10.4057/jsr.51.235

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Summary:社会階層と社会的ネットワークとの関係については, 多くの研究が共通して, “階層が高い方がネットワークの構成は多様である” という知見を共通に報告している. 本稿ではまず先行研究の検討によって, この知見は社交・相談・軽い実際的援助などをネットワークとして測定した結果得られたものであることを示し, これを〈交際のネットワーク〉と呼ぶ. 次にこの交際のネットワークと, 自分の身体的ケアについてのネットワーク (〈ケアのネットワーク〉と呼ぶ) の両方を含んだ調査データを分析する. そしてその結果を基に, 交際のネットワークについては先行研究と同様, 男女ともに階層が高い方がその構成は多様であるが, ケアのネットワークについては, 男性と女性では階層の効果が異なることを示す. すなわちケアのネットワークは, 男性では, 階層が高い方が配偶者と子供に限定され多様性に乏しいが, 逆に女性では, 階層の高い方が家族に加えて専門機関を含める人が多く多様である.最後にこの結果に基づき, 社会的ネットワークは, 〈交際〉と〈ケア〉の両面からとらえられなければならないこと, そして〈公共領域と家内領域の分離〉という近代の支配的イデオロギーに適合するような形でネットワークを編成している人は, 階層の高い男性に最も多いことを論じる.
ISSN:0021-5414
1884-2755
DOI:10.4057/jsr.51.235