遺伝性神経難病の発症前遺伝子診断を受けて生きる人の体験―家族性アミロイドポリニューロパチー家系員の語りの分析

要旨 【目的】本研究は,発症前遺伝子診断を受け,将来ほぼ確実にFAPを発症することを知って生きる人の体験を明らかにし,看護への示唆を得ることを目的とした. 【方法】研究協力者5名に半構造化面接法を用いてデータ収集し,質的記述的に内容分析を行った. 【結果および考察】共通した体験は以下のとおりであった.彼らは親・親族が闘病する姿と死を体験し,親族から自分自身が将来発症する可能性がある(at risk)ことを知らされ,将来の見通しや家族への責任を果たすべく,確実な人生設計をしようと考えた.結果は陽性だったが,彼らは発症を見定めて生きる決意をした.検査に対する考えは,at riskである同胞と異なっ...

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Published in日本看護科学会誌 Vol. 33; no. 2; pp. 40 - 50
Main Authors 柊中 智恵子, 中込 さと子, 川崎 裕美, 小野 ミツ
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本看護科学学会 20.06.2013
公益社団法人 日本看護科学学会
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ISSN0287-5330
2185-8888
DOI10.5630/jans.33.2_40

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Summary:要旨 【目的】本研究は,発症前遺伝子診断を受け,将来ほぼ確実にFAPを発症することを知って生きる人の体験を明らかにし,看護への示唆を得ることを目的とした. 【方法】研究協力者5名に半構造化面接法を用いてデータ収集し,質的記述的に内容分析を行った. 【結果および考察】共通した体験は以下のとおりであった.彼らは親・親族が闘病する姿と死を体験し,親族から自分自身が将来発症する可能性がある(at risk)ことを知らされ,将来の見通しや家族への責任を果たすべく,確実な人生設計をしようと考えた.結果は陽性だったが,彼らは発症を見定めて生きる決意をした.検査に対する考えは,at riskである同胞と異なっていた.また,配偶者へは感謝と,重荷を背負わせたという負い目との葛藤があった.さらに,子どもに対しては,疾患遺伝子を引き継ぐことの苦悩を感じていた. 【結論】以上から,at risk者が難病発症の可能性を確定させて生きる人生を選択することや陽性だと明らかになった後の葛藤の様がわかった.彼らが生き抜くためには,将来設計上のさまざまな選択肢を提示すること,さらに豊かなSocial supportを構築する心理支援を行うことが重要であることが示唆された.
Bibliography:研究報告
ISSN:0287-5330
2185-8888
DOI:10.5630/jans.33.2_40