太平洋側ブナ林におけるブナ豊凶が堅果食性小蛾類の最優占種ブナヒメシンクイにもたらす飽食効果

本研究の目的は,北関東の高原山の太平洋側ブナ林において,堅果食性小蛾類の最優占種ブナヒメシンクイに対してブナの豊凶が飽食効果として働いているかを調べることである。そのために,ブナの豊作年を含む2008~2012年におけるブナヒメシンクイの個体数変動に関連する三つの指標(ブナヒメシンクイ幼虫密度,ブナヒメシンクイ虫害率および林分虫害率)と総落下堅果数との関係を解析した。ブナヒメシンクイの幼虫密度と虫害率は,ブナの落下前の樹上果実から得られたデータを基に算出した。ブナの豊凶程度と林分虫害率は,調査林分に設置されたシードトラップのデータを用いた。三つのいずれの指標値とも豊作年で低下し,豊作翌年で最も...

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Published inNihon Shinrin Gakkaishi Vol. 98; no. 1; pp. 26 - 30
Main Authors 駒井, 古実, 山路, 貴大, 逢沢, 峰昭, 大久保, 達弘, 大岡, 智亮
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本森林学会 01.02.2016
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ISSN1349-8509
1882-398X
DOI10.4005/jjfs.98.26

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Summary:本研究の目的は,北関東の高原山の太平洋側ブナ林において,堅果食性小蛾類の最優占種ブナヒメシンクイに対してブナの豊凶が飽食効果として働いているかを調べることである。そのために,ブナの豊作年を含む2008~2012年におけるブナヒメシンクイの個体数変動に関連する三つの指標(ブナヒメシンクイ幼虫密度,ブナヒメシンクイ虫害率および林分虫害率)と総落下堅果数との関係を解析した。ブナヒメシンクイの幼虫密度と虫害率は,ブナの落下前の樹上果実から得られたデータを基に算出した。ブナの豊凶程度と林分虫害率は,調査林分に設置されたシードトラップのデータを用いた。三つのいずれの指標値とも豊作年で低下し,豊作翌年で最も高くなり,その後,次の豊作年まで漸減した。また,これらの値と総落下堅果数の前年比の間には負の関係がみられた。これらのことから,太平洋側のブナ林において,ブナの豊凶はブナヒメシンクイに対して飽食効果があると考えられた。
Bibliography:903015
ZZ20018854
ISSN:1349-8509
1882-398X
DOI:10.4005/jjfs.98.26