“多細胞生物”糸状菌の隔壁孔を介した細胞間連絡

糸状菌は,多数の細長い細胞が連なる菌糸の形態で生長する.隣接する細胞は隔壁で仕切られているが,隔壁孔と呼ばれる小さな穴を介して連絡をしている.この隔壁孔を介した細胞間連絡は,糸状菌の多細胞生物としての生育に重要な役割を果たしていると考えられるが,一方で,ある細胞が溶菌した際に,隔壁孔を介して連絡している隣の細胞も溶菌に巻き込まれるリスクを伴うシステムでもある.筆者らは,低浸透圧ショックにより麹菌Aspergillus oryzaeの菌糸先端が溶菌することを発見し,糸状菌に特異的なオルガネラWoronin bodyが隔壁孔をふさぎ,溶菌の伝播を防ぐ役割をもつことを明らかにした.さらに,ストレス依...

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Published inMaikotokishin Vol. 61; no. 2; pp. 53 - 58
Main Author 丸山, 潤一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本マイコトキシン学会 2011
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ISSN0285-1466
1881-0128
DOI10.2520/myco.61.53

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Summary:糸状菌は,多数の細長い細胞が連なる菌糸の形態で生長する.隣接する細胞は隔壁で仕切られているが,隔壁孔と呼ばれる小さな穴を介して連絡をしている.この隔壁孔を介した細胞間連絡は,糸状菌の多細胞生物としての生育に重要な役割を果たしていると考えられるが,一方で,ある細胞が溶菌した際に,隔壁孔を介して連絡している隣の細胞も溶菌に巻き込まれるリスクを伴うシステムでもある.筆者らは,低浸透圧ショックにより麹菌Aspergillus oryzaeの菌糸先端が溶菌することを発見し,糸状菌に特異的なオルガネラWoronin bodyが隔壁孔をふさぎ,溶菌の伝播を防ぐ役割をもつことを明らかにした.さらに,ストレス依存的に隔壁孔に蓄積するタンパク質を見出し,隔壁孔を介した細胞間連絡がストレスに応答して制御される可能性を示唆した.
Bibliography:814177
ZZ20003608
ISSN:0285-1466
1881-0128
DOI:10.2520/myco.61.53