左室腔に占拠性病変を形成した心室中隔原発血管肉腫の犬の1例

心室中隔の左室面に形成された腫瘤状病変が左室腔を占拠するに至った犬の1例について報告する。本例は後躯麻痺を主訴に来院し,腹部超音波検査にて腹部大動脈塞栓症と診断された。また,心臓超音波検査にて心室中隔から左室の内腔に向けて隆起する腫瘤状構造物が描出されたことから,心臓内に形成された腫瘍または血栓の存在が疑われた。血栓溶解療法ならびに抗凝固療法により症状は一時改善したかに見えたが,左室腔内の腫瘤はその後急速に増大し,第80病日に自宅にて急死した。心臓の肉眼的検索では,心室中隔に端を発した増殖性病変は左室腔を占拠し,さらには大動脈弁口を越えて上行大動脈内にまで伸展していた。組織学的に腫瘤の大部分は...

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Published inDōbutsu no junkanki Vol. 51; no. 1; pp. 35 - 40
Main Authors 今井, 智子, 佐々木, 崇文, 町田, 登, 平尾, 秀博, 木村, 勇介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本獣医循環器学会 20.08.2018
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ISSN0910-6537
1883-5260
DOI10.11276/jsvc.51.35

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Summary:心室中隔の左室面に形成された腫瘤状病変が左室腔を占拠するに至った犬の1例について報告する。本例は後躯麻痺を主訴に来院し,腹部超音波検査にて腹部大動脈塞栓症と診断された。また,心臓超音波検査にて心室中隔から左室の内腔に向けて隆起する腫瘤状構造物が描出されたことから,心臓内に形成された腫瘍または血栓の存在が疑われた。血栓溶解療法ならびに抗凝固療法により症状は一時改善したかに見えたが,左室腔内の腫瘤はその後急速に増大し,第80病日に自宅にて急死した。心臓の肉眼的検索では,心室中隔に端を発した増殖性病変は左室腔を占拠し,さらには大動脈弁口を越えて上行大動脈内にまで伸展していた。組織学的に腫瘤の大部分は血小板と線維素を主要な構成成分とする血栓であったが,心室中隔との接合部では多形性を示す異型間葉系細胞が明瞭な血管腔ないしは血管洞様構造を形成していたことから,本腫瘤は血管肉腫を基盤に形成された血栓性の増殖性病変であることが明らかになった。
Bibliography:922531
ZZ00011639
ISSN:0910-6537
1883-5260
DOI:10.11276/jsvc.51.35