中部山岳域におけるハイマツを食害するタカネシママツハバチGilpinia albiclavataの分布変遷

近年,中部山岳域においてハイマツPinus pumilaの枯損が顕著であり,タカネシママツハバチGilpinia albiclavataによる食害がその一因であることが報告されているが,その生態的知見にはいまだ未知の部分が多い。そこで,本研究は中部山岳域を対象に,ハイマツを食害するタカネシママツハバチの分布域と発生状況を明らかにすることを目的として行った。調査は飛騨山脈(常念岳~蝶ヶ岳),木曽山脈(木曽駒ヶ岳~将棊頭山)および赤石山脈(北岳~中白根山)の稜線のハイマツ帯において,2005年,2011年~2013年の夏季に幼虫集団の分布調査を行った。その結果,本研究により飛騨山脈の蝶ヶ岳では20...

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Published in信州大学農学部AFC報告 no. 12; pp. 63 - 73
Main Authors 古屋, 諒, 斉藤, 雄太, 中村, 寛志, 江田, 慧子, 原, 秀穂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 01.03.2014
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ISSN1348-7892

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Summary:近年,中部山岳域においてハイマツPinus pumilaの枯損が顕著であり,タカネシママツハバチGilpinia albiclavataによる食害がその一因であることが報告されているが,その生態的知見にはいまだ未知の部分が多い。そこで,本研究は中部山岳域を対象に,ハイマツを食害するタカネシママツハバチの分布域と発生状況を明らかにすることを目的として行った。調査は飛騨山脈(常念岳~蝶ヶ岳),木曽山脈(木曽駒ヶ岳~将棊頭山)および赤石山脈(北岳~中白根山)の稜線のハイマツ帯において,2005年,2011年~2013年の夏季に幼虫集団の分布調査を行った。その結果,本研究により飛騨山脈の蝶ヶ岳では2011年に初めて本種の分布が確認された。その後2013年には集団数が188にも及び,分布拡大の傾向を示していた。木曽山脈は,2005年に発生していた中岳付近から2013年には今まで分布していなかった西駒山荘近辺まで,8年間で約3kmの分布拡大を行ったことが分かった。赤石山脈では2005年と同じ分布域で一時発生の縮小が見られるものの,2013年には多くの集団が見つかり,発生が増加していた。稜線のハイマツ帯での幼虫集団の分布は,特定の場所に多く見られる集中分布のパターンを示した。以上の結果より,本種は分布域を移動して周期的大発生をする年次変動パターンをもつ種であると考えられた。
Bibliography:ZZ20010647
872128
ISSN:1348-7892